兎のメモ

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歌劇「明治東亰恋伽〜月虹の婚約者〜」感想

 歌劇「明治東亰恋伽~月虹の婚約者~」2018年8月19日の昼公演の個人的な覚書と感想です。

 

 初めに、私は明治東亰恋伽の原作のキャラクターの顔と名前、立ち位置、及び全体の大枠を知っているだけであること、前作の「明治東亰恋伽~朧月の黒き猫~」はDVDで見たことがあるということをあげておきます。明治東亰恋伽についてあまり詳しくはありません。

 今回は明治東亰恋伽が好きな知人に誘われ、前作の「明治東亰恋伽~朧月の黒き猫~」が面白かったこともあり、舞台に足を運びました。

 席は後ろから数えた方が早いくらいですが、座席が段々になっていたので全体が見やすかったです。役者さんの表情まではわからなかったので、細かいところはDVDかなと思います。

 

 以下、ネタバレありのレポート、感想になります。

 全体の流れではなく、印象に残ったシーンなどを挙げていきます。

 

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 まず導入部分。

 芽衣ちゃんが明治に飛ばされるシーン、鹿鳴館であれこれあるシーンは、鴎外さんに連れられ、鴎外さん宅に着いた後回想として語られます。

 今回、チャーリーさんは声のみの出演ですが、影絵をうまく使い、本当にそこにいるかのような錯覚を覚えます。

龍神芽衣ちゃんのクラスメイトの回想などで、今回も影絵が度々使われています。影の特質を生かしたものもあり、よく考えられているなと毎回驚かされました。

 

 今回、エリスが出てきます。エリスとは、森鴎外のドイツでの元恋人ですが、結婚することなくドイツに置いてきた女性です。実際のところは知りませんが、今作では親族からの反対や森鴎外の立場など(劇中で詳しく説明あり)が理由になっています。森鴎外の著書「舞姫」のヒロインでもあります。

 エリスは森鴎外を追って日本に来たという話を聞いたことがあったため、「森鴎外とエリスが悲しい恋をした」という描写があるたび、申し訳ないですが、ふふっとなってしまいました。

 

 その話はおいておきまして、今回のめいげきでは、エリスは鴎外さんの忘れられない人として、物語の鍵となってきます。本作では化ノ神としても登場します。

 そのため、エリスが出てくる森鴎外の「舞姫」を読んでいる、もしくはあらすじだけでも知っておくと、より楽しめるかもしれません。

 

 前作同様、鴎外さんは行水していました。めいげきに関する記事で、行水のシーンが結構取り上げられていて、そこ!?と密かに思っております。

 

 また、めいげき初登場の横山大観さんはすごく良いキャラをしていました。確か、次のゲームで追加されるキャラクターなんですよね?春草さんと仲が良く、わちゃわちゃしていて可愛かったです。勿論、決めるところはきちんと決めていて、かっこよさも持ち合わせていました。

 

 日替わり対決は、今回音二郎さんのいるお座敷での座敷遊びでした。毎回音二郎さんが女の人の格好で出てくるときは美人で驚きです。

 私が観劇した回は、八雲さんと鏡花ちゃんの手押し相撲対決。余程触られたくないのか、鏡花ちゃんは着物の袖を握った状態で手押し相撲に挑みます。八雲さんは自分が勝てば、物の怪について鏡花ちゃんに洗いざらい話してもらうとか。

 勝負は、「あんなところに物の怪が!」と叫び、八雲さんをそちらへスライディングさせた鏡花ちゃんの勝ち。そのとき、藤田さんも立ち上がり、鏡花ちゃんが指した方向を見ていました。

 鏡花ちゃんは毒舌で、一気に捲し立てるシーンがあるのですが、それを見る度に役者さんはすごいんだなあと思います。

 八雲さんはよく劇場を笑いに誘うのですが、急にかっこよくなるのでずるいです。劇中、物の怪講座があるのですが、荷台のようなものに乗り、滑走しながら登場します。物の怪講座は面白く、同時にこれをやりきる役者さんはすごいなあとまた思うのです。

 

 

 芽衣ちゃんは鴎外さんの形だけの婚約者となり、美人コンテストに登場することになります。

 そこで、ロミオとジュリエットの英文朗読を披露することとなります。当時は英語ができる、ロミオとジュリエットを知っているということは高い教養を持っているとされたのですね。

 余談ですが、途中芽衣ちゃんの口から英語が飛び出し、鴎外さんが英語で答えるということを何回か繰り返すのですが、必死な芽衣ちゃんに対し、すらすらと英語を話すかつ発音がいい鴎外さんに、この人は賢い人なんだと感心しました。発音が良くて普通に驚きました。

 

 さて、物語が進んで行くにつれ、芽衣ちゃんと鴎外さんは徐々に惹かれていきます。

 芽衣ちゃんは物の怪が見えることで周りから「どうせ目立ちたいだけ」、「気持ち悪い」などと言われてきたことにより、自分に自信がなく、美人コンテストの会場で、「家柄はどちら」、「どうせ駄目」などと言われたことにより、自分は鴎外さんに相応しくないと思うようになります。また、エリスのことを大観さんから聞いたこともあり、まだ鴎外さんはエリスを思っている、エリスを物語に返したい、好きな人の役に立ちたいとも思うようにもなります。

 迎えた美人コンテスト当日。芽衣ちゃんがロミオとジュリエットの英文朗読をしている最中、会場に化ノ神のエリスが現れます。藤田さんに斬られそうになったエリスを芽衣ちゃんは両腕を広げて庇います。美人コンテストを放棄して。その中で芽衣ちゃんはエリスが伝えようとすることを聞き取り、エリスの言葉を復唱し、ドイツ語で話します。劇中の最後で回収されますが、「彼(鴎外)はあなた(芽衣)を愛している。彼を頼みます」といった内容のドイツ語です。

 その後藤田さんが、エリスを庇った芽衣ちゃんを斬ったように思われ、八雲さんから責められたときに、藤田さんが「見くびるな」と返すシーンがあります。そこの八雲さんと藤田さんがかっこよかったことをここに記しておきます。

 

 途中放棄したこと、そして大観さん曰く家柄も絡んでいるとのことで、芽衣ちゃんは美人コンテストに入賞することはありませんでした。そのことでも会場にいた人々から「やっぱり駄目だった」などと言われます。

 ごめんなさい、と謝る芽衣ちゃんに、鴎外さんは「僕の中では君が一等だ」と言います。鴎外さんのこの言葉がとても好きです。芽衣ちゃんの努力を知っている鴎外さんの口から出たこの言葉は、慰めでもなく、本心なのでしょう。

 

 物語の終盤、鴎外さんは、エリスを周りの目から守れなかったことへの後悔や、芽衣ちゃんは平成へ帰らなければならないことにより、芽衣ちゃんがチャーリのもとへ行き、答えを告げる日、芽衣ちゃんが家を出ても引き止めることはありませんでした。

 芽衣ちゃんは帰る決断をしていたのか、チャーリーの前に制服で現れます。制服で現れた芽衣ちゃんを見て、帰還エンドか?と思わず身構えました。

 しかし、春草さんの後押しもあり、芽衣ちゃんのところへ行き、側にいてほしいと告げます。舞台上にいる芽衣ちゃんを客席の通路から呼び止めた鴎外さんには鳥肌が立ちました。

 芽衣ちゃんは自分が鴎外さんに相応しくないと思っていたことやエリスのことなど、躊躇いの理由を告げ、鴎外さんはそれらを全て取り払い、芽衣ちゃんの手を引きます。エリスが芽衣ちゃんを通じて話した

 芽衣ちゃんと鴎外さんが迷い、苦悩しているシーンは、鏡花ちゃんと音二郎さんが龍神と向き合うシーンと交錯して描かれます。ここはぜひ見ていただきたいです。

 好きだからという理由だけで残ること、引き止めることを選ばれなかった二人が、明治で結ばれることを、本当の婚約者となることを選んだ結末。

 チャーリーさんが望んでいた芽衣ちゃんの幸せがそこにあるかもしれません。

 劇中、チャーリーさんはずっと芽衣ちゃんの幸せを願っていました。こちらの方が、芽衣ちゃんは自然に笑えている、と。そんな芽衣ちゃんの幸せを願ったチャーリーさんにも幸せになってほしいです。

 

 婚約者と書いて「マイネリーベ」と読む。マイネリーベとは「愛しい人」という意味だそうです。

 最後に七色の光で照らされ、鷗外さんは芽衣ちゃんに跪いて手を取り、「僕のマイネリーベ」(うろ覚え)と言いました。その瞬間、芽衣ちゃんと鴎外さんは形ばかりの婚約者から愛しい人に変わった。タイトルとしても秀逸で、それを示すような演出もよく考えられているなと感じました。

 

蛇足

 今回、菱田春草さんの個人ブロマイドを買わせていただいたのですが、3枚目の破壊力がすごかったです。橋本さんの春草さんが好きな人は購入をお勧めします。

 

 

 

 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。